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今回の訪問中、一番の衝撃。
大切な大切な、一級の織手さんであるアニータが、脳卒中(?)で倒れ、
その翌日に亡くなった。

アニータは、ふたりの若いむすめ(義娘と末娘)を、いい織手さんに育てている
ところだった。
むすめたちは、
「おかあさんは、すごく厳しい先生。だから私たちもいい織手になれる」
って言っていた。
小柄で、すごく細い身体からは想像できないほど、力強い目の詰まったいい織物を
仕上げてきていた。
毎回、創意工夫ある魅力的な新柄と伝統柄、どちらもいいものを織り上げていた。
彼女の織物を見るのは、毎回とても楽しみだった。
仕事も速く、品質の話がちゃんと通じる、数少ない織手のひとりだった。
今回は、短い日程だったのにも関わらず、あまりに沢山仕上がってきたので、
「私が買いきれないくらい沢山織ったらダメだよ~」
と冗談交じりに、嬉しい悲鳴を上げるほどだった。

カレンダーのないティボリの人たちの年齢は、はっきりしない。
本人いわく、50歳代のようだった。
その年代で、英語が話せる知的さと向上心。
ユーモアと思いやりと誠実な個性。
これからもず~っと一緒に仕事をしていく、仲間なのだと思っていた。

私が彼女から購入した織物の売り上げで、次の織物の繊維を買いに、隣村に出かけ、
帰ってきたとたん、家で倒れたという。
最後の最後まで、織手のままだった。

今まで、フィリピンでは何度も、目の前の死んでいく人に
『何も出来ない自分』
というのを感じさせられてきた。
死んでいく人を、見ているだけしか出来ない私。
アンフェアな現実を思い知る時間。
また今回も体験することになるなんて…

私に、足りないことはなんだろう?
私に、できたことはなんだろう?
私は、ここから、どういう生き方を更に重ねていくのか?

目の前で死んでいく人を、見つめるしかない無力感。
それをちゃんと噛みしめて、受け止めて、それでも前に進んでいこう。
無力であっても、微力であっても、あきらめないことくらいしか、
今の私にできることはない。
何度打ちのめされても、立ち上がろう。
生きてるだけでありがとう。
そう思いながら、細々とやれることを継続していくことが、
私に与えられた道なのかな、と…

アニータ。
あなたのことは忘れない。
あなたから学んだこと、少しでも自分に取り込みたい。
あなたと少しの間だったけれど、一緒に仕事ができたことに感謝。
最期まで自分の仕事をする、ということを教えてもらった。
あなたの織物を見てくれる人に、あなたのことを伝え続けます。
出会えて本当に良かった。
一緒に笑いあった時間を思い出しながら、これからも、あなたのむすめたちを含めた
すばらしい織手さんたちと、仕事をしていきます。
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